宮崎里司 明治書院 2001年
本のタイトルを見て「まさにその通り」と思いました。私が知っている白鵬や朝青龍といったモンゴル出身の力士が、日本人と同じような感じですらすらと日本語を話しているのがとても不思議でした。「そこには何か秘訣があるはず」と期待して本書を手に取りました。
この本に書かれているエッセンスを示したいと思います。外国人力士の学習法の特徴として
1.来日前の日本語学習経験がない
2.通訳に頼らない
3.バラエティのある日本人ネットワーク(親方、兄弟子、おかみさん、床山、行司、呼び出し、相撲教習所、商店街、相撲関係者、タニマチ、ファン)
4.24時間日本語漬け(相撲部屋での生活)
5.日本事情の学習(相撲界の日本事情)
6.強い動機(相撲界で番付の上に上がる-ハングリー精神)
7.順応性(日本に慣れようとする素直さ)
8.バラエティのある教材(番付表、テレビ、ビデオ、カラオケ、メール)
9.辞書を引かない
といったものがありました。まとめると、相撲を通じて日本語漬けの環境で生活するので、日本語を理解して話さざるを得ない状況になっているということです。日本語力をアップするための“教材”は周りの環境すべてです。
一方で筆者も英語習得に苦労を重ねてきたことを綴っています。オーストラリアのモナシュ大学で日本語を教えていましたが、その時に英語力をアップするために取り組んだこと、役に立ったことは次の通りとのことでした。
1.学科会議や学内委員会に積極的に参加する→話したり聞いたりする機会づくり
2.提出書類をチェックする現地スタッフの確保→正しい英語かどうかのチェック
3.同じような分野の教員とのネットワークづくり→英語力とアカデミック能力の向上
4.国際交流センターの担当者との交流→英語力アップ
5.図書館の利用
6.メールの活用
7.専門分野の学会での研究発表、論文投稿
8.博士論文の推敲→ネイティブスピーカーに何度もチェック
9.近所の付き合い
10.ダンス教室に通う
11.不動産の購入
【語学の達人に向けて】
また最後に語学の達人になる方法としてポイントをまとめています。
1.強い学習同期を持て
2.自分の学習環境にできるだけ多くの母語話者を取り込め
3.そのネットワークの中で目標言語に漬け浸れ
4.教室だけの語学学習で満足するな
5.常に自らの学習に働きかけるストラテジーを習得する工夫を施せ
6.自分の学習を人に管理させず、自分自身で面倒見ろ
7.語学学習のモデルとなるような学習者はあなたの周りに必ずいる。その学習者の行動をよく観察して、自分に合ったものは積極的に盗め
この本により語学を身に付ける上でのポイントは把握できた気がします。著者は早稲田大学で日本語教育を研究していることもあり、説得力があります。20年以上前の本ですが参考になりました。登場する力士は同書が書かれた時期を反映しているので、今読むと時代を感じるかもしれません。
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日本語教育にまつわる本について、内容を整理して理解を深めるため、備忘録を兼ねる形でもろもろ記していきたいと思います。