大修館書店 中井延美 2018年
日本語を教えるボランティアをやっていたのは、今から20年以上前でしょうか。学生の時に始めてその延長で社会人になってしばらくやっていた記憶があります。数年前にもボランティアを始めようかと探しましたが、ちょうど新型コロナウイルス感染症が蔓延していたこともあり、とてもボランティアをできる状態ではありませんでした。
あらためて本書を手にしたのは、日本語教師を目指すうえで、ボランティアでは学習者にどのような教え方をしているのかを知りたかったからです。日本語教育能力検定試験には合格していますが、知識として知っていることと実際に教えることとでは大きな違いがあります。本書を読んであらためて自分の知識を実践でどう生かすかが重要だと思いました。
しかし、昔、日本語ボランティアをやったことがありますから、それほど堅苦しく考えることもないとも感じました。学習者に知識を教えることが目的ではなく、学習者の日本語能力を高めることが重要だからです。ですからいかに立派な知識を持っていたとしても、学習者が興味を持ってくれたり理解したりしてくれなければ意味がありません。学習者のニーズに合わせて分かりやすく楽しく学習できるようにすればいいのかなと思います。
本書では、絵教材が重要な役割を果たし、学習者の理解を助け効率的な学習ができることを記載してありました。特に初級レベルでは大変便利なツールだと指摘しています。確かにその通りです。ただ、どの絵を使うのか、どのようなところから絵を調達するのかなどを考えると、なかなか大変だと思いました。以前、420時間の日本語教師育成講座で模擬授業を行ったことがありますが、授業で使う絵を探すのに結構苦労しました。自分で描くという手もありますが、逆に混乱させてしまうかもしれません(笑)。ネットにあるフリー素材をうまく使うことが重要だと思います。
本書はボランティア向けなので、文法のポイントを押さえながら実践的な部分は参考になりました。特に動詞やイ形容詞・ナ形容詞などの活用については、分かりやすく書いてありました。そういう意味では日本語教育能力検定試験で勉強したことが役立ち、より理解が深まった気がします。そういった基礎的なことを知らずに、外国人に教える日本語では「ナ形容詞」「イ形容詞」が使われていると本書に書いてあるのを見たら、少し面食らったかもしれません。昔、ボランティアで教えていた頃は、そのようなことは全く知りませんでしたから。
本書を読んで日本語を教えることにちょっと自信が持てた気がします。ページ数も100ページを少し超えたくらいなので簡単に読めます。試験勉強の参考書を選ぶ際に、一番薄くて簡単なものを選んだ方がいい、ということを何人かの本で読んだことがあります。すばやく概要を把握するのに適しているからです。本書はボランティアの概要を把握する上で適切な内容でした。今後、日本語を教える機会を得た時に、本書の内容を生かしたいと思います。