東京・九段北にある靖国神社。日本が明治維新を実現する過程で命を失った多くの戦没者の霊を慰めるため、1869年(明治2)に明治天皇の勅令によって建てられた招魂社に源を発します。1879年(明治12)に現在の靖国神社と改称されました。明治天皇が命名した「靖国」という社号は、「国を靖(安)んずる」という意味で、靖国神社には「祖国を平安にする」「平和な国家を建設する」という願いが込められているそうです。よく知られている通り、太平洋戦争で亡くなった軍人も祀られており、現在246万6千余柱の御霊を祀っています。
靖国神社と言えば、歴代の首相が参拝するたび、韓国と中国が激しく反発するという状況がたびたび生じています。太平洋戦争などにおける歴史認識と死者を悼む行為が日本と中国・韓国との間で非常にセンシティブな問題になっているわけです。特にA級戦犯が合祀されていることが問題視されていますが、もっと複雑な要素が絡み合っています。今、このことに対して明確な考えはありませんが、歴史を真摯に学ぶ、向き合うことは重要だと思っています。このほか靖国神社では政教分離の問題も指摘されています。
歴史問題のこともあり、これまであまり靖国神社に足を運んだことはありませんでした。日本人にとってはとても重い問題です。ただ実際に行ってみると、大きな鳥居や広々とした敷地の中を多くの人が散策しており、メディアで騒がれているような緊張感や特別感を感じることはありません。春には桜の名所としても知られています。近くには日本武道館のある北の丸公園があり、皇居外苑の散策ルートに組み入れて訪れてみるのはいかがでしょうか。いずれにしてもいろいろな思いをさせてくれるのが靖国神社です。(樹)