日本語教育能力検定に合格するには、作文で一定の点数が採ることが必要です。とはいえ、作文のテーマは試験当日でなければ分からないので、なかなか対策しづらいのも事実です。また、作文を苦手とする学習者も多いと思います。今回は私が作文を書く上で注意していることや作文対策として行ったことを紹介したいと思います。
問いを確認する
もともと文章を書くことに抵抗がなく、仕事でも文章を書いていたので、作文をまとめることに特に苦手意識はありませんでした。とはいえ、日本語教育に関する言葉を日頃使っているわけではないので、スムーズに書けるわけではありません。
まず意識したことは、出題テーマで問われていることを書くというものです。例えば、令和2年度の日本語教育能力検定試験では「やさしい日本語」に関するテーマが出題されました。その中で「こうした意見についてどのように考えますか」「次のキーワードから一つ選び、それに関連づけて」「そのキーワードをどのような意味で使っているかが分かるように書いてください」などの指示があります。この指示を踏まえて書くようにしていました。
とりあえずこの指示さえ守っていれば、答えから大きく外れることはないと思います。もちろん書いた中身が的外れであれば仕方ありませんが、まず問いは何かを確認し、それに沿ってまとめることが重要です。
私の場合、あまりよく知らない内容が出題テーマに出されても、この問いを抑えることで文章をひねり出し、とにかく解答用紙のマス目を埋めることを意識しました。マス目を埋めることによって少なくとも精神衛生上「書けた!」という安心感や満足感がありました。
書く内容を考える
何か書かなくてはいけないと焦って、とりあえず書き始める人がいるかもしれません。また思いついたことから書いていくという人もいるかと思います。でも、そのような書き方では必ず行き詰ってしまいます。
やはり書き出す前に、どう書くか戦略を練る必要があります。戦略といってもそんな大それたものではありません。問いに対して、まずどういう結論を出すかを決め、結論を導き出すためのロジックや補強する事例を考えるのです。さらに、結論に対する反対の見方など、自分の意見が一方的にならないように他の意見を取りいれます。
作文を書く上で、最初に結論を持ってきた方がよい、という意見があります。結論を持ってくる書き方は主張がわかりやすく論理的に書けるメリットがあります。
ただ、私自身は必ずしもこれがベストではなく、書き方の一つだと思っています。自分の知っている内容であれば、はっきりと主張を固めたうえで論理展開できると思いますが、必ずしもそのようなテーマばかりではありません。日本語教育能力検定試験の試験範囲はとても広く、すべてを網羅して一定以上のレベルで論述できるようになるのは、なかなか難しいと思います。ですので、問いに対して、それにかかわる状況や意見を整理して、最後に結論を持ってくるという書き方でもいいかと思います。実際、私はそのような書き方をしていました。
何回も書いてみる
作文が上達するには、何回も書いてみる必要があります。私の場合、日本語教育能力検定試験の過去問題5年間分を5回繰り返したので5回×5年=25回は書いたと思います。ほかにも某大学の先生が運営する通信講座でも作文の課題がありましたので、それも5回ほどやったと思います。
何回も書くことで、試験で指定されている400字という文量に慣れます。どれだけ書けば400字のマス目を埋めることができるのか。私自身、日本語教育に関する知識が十分に身に付いていないと思っていましたので、どうやって今持っている知識を有効活用して文章をまとめるかに注力しました。知らないような内容のテーマでも、何回も書き切ることによって自信がつきました。
また、テーマに合わせて作文を書くことで改めて日本語教育の内容を把握し、理解が深まることがあります。作文はある程度、テクニカルな面で補えるところがありますが、やはり内容をよくし、正答率を高めるには、日本語教育の各項目を勉強して、単なる知識ではなく使いこなせるようにすることが重要です。作文のテーマは、同じものが出る可能性はありまないと思いますが、過去問や問題集の作文をこなす中で、あいまいだった知識を整理し、自分の“血肉”として確かなものにしていけば、よりいい作文が書けると思います。
現役教師が有利かも!?
令和3年度の日本語教育能力検定試験の作文は「反転授業」がテーマでした。見た瞬間、「え、反転授業ってなんだっけ?」と焦りました。反転授業は学習者が自宅で事前に学習し、授業で学習した内容をもとに問題を解いたり演習したりというものです。通信講座の講義資料にそのような内容があったな、と半分確信が持てないながらも何とか書きました。
しかも今回のテーマは反転授業を行う上で、動画を使い、60分の授業で上級文法を使うというものでした。現場を知らない私にとってはハードルが高い内容です。
もし、これが日本語学校などで実際に外国人学習者に教えている現場の教師であれば、「普段やっていること」として、容易に書けたかもしれません。逆に知っているだけに、いかに400字という限られた文字数でコンパクトにまとめる方が難しかったかもしれません。日本語教育能力検定試験の内容は必ずしも知識を確かめるものではなく、現場で実践的に使える内容が問題で出ていると思います。
あきらめない!
上述しましたが、令和3年度の作文の問題では、本当に焦りました。とにかくマス目を埋めることを意識し、自分の持っている知識をフル回転してまとめました。試験終了後、全然うまく書けなかったと苦い気持ちでいたのですが、こうして合格できたということは多少なりとも点数を採ることができたのだと思います。
作文は6割以上、マークシートで採れないと採点してもらえません。そのうえで合否を決める重要な問題になります。ですので、作文が苦手な方は逃げずに取り組む必要があります。極論すれば、得点さえとれれば、上手に書けなくてもいいのです。そのためには、やはり書いて見直す、という作業を何度も繰り返すことが重要だと思います。