何とも言えない気分
人間、あわてるとミスをするものです。意気揚々と犬山城に向かう予定が、違う行き先の電車に乗ってしまい、想定外のところに来てしまいました。青塚駅で電車に乗り、もと来たルートを戻って途中で乗り換え、犬山駅に向かいました。何とも言えない気分です。犬山駅はそれほど大きくなく普通の駅でした。到着してから犬山城のホームページにアクセスすると、登城時間が1時間以上かかると出ていました。「これは!」と思いましたが、もう行くしかありません。人の流れに付いていきながら犬山城を目指しました。
大にぎわいの「本町通り」
車が行き交う幹線道路を右折すると、昔の城下町を再現したような造りの建物が両側に並ぶ通りに入りました。後から調べて分かりましたが、「本町通り」でした。さまざまな飲食店があり、若者からお年寄り、家族連れまで多くの人でにぎわっていました。「これはすごい」と驚きました。ゴールデンウイークとはいえ、何でこんなに人がいるのだろうと不思議でした。特に若者の多さが目立ちました。歩行者天国のような感じで食べ歩きしている人を見かけます。遠目には小高い場所に建っている犬山城が見えました。ぶらぶらしたい気持ちもありましたが、ひたすらお城を目指してすたすた歩きました。
2時間待ち!
神社の鳥居が見えてきて、いよいよ小高い場所にある犬山城に登っていくところまで来ました。三光稲荷神社という神社で、参拝客が列をなして並んでいます。参拝は本来の目的ではないので並んでいる人を横目にずんずん歩いて行きました。幾重にも並んだ小さい赤い鳥居が印象的で、時間と心に余裕があればゆったりと散策したのでしょうが、まずは犬山城にたどり着くことが先決でした。石階段を登っていくと発売所がありました。前にある看板には天守閣の登城時間が2時間待ちとありました。「まじか」と思いましたが、チケットを買えば天守に登らずとも城内には入れます。チケットを購入して犬山城の門をくぐりました。
日本最古の天守
ここで簡単に犬山城の概要を紹介したいと思います。犬山城は織田信長の叔父である織田信康が天文6年(1537)に木ノ下城を移して築城したと言われています。木曽川沿いの小高い山に建てられ「後堅固(うしろけんご)」の城として知られています。城から見て木曽川のある北側は断崖絶壁になっていて、敵が川を渡ってきたとしても容易に登ることはできません。明治維新後に犬山城は廃城となり、天守を除いて大部分が取り壊されました。昭和10年(1935)に国宝に指定されました。現存する天守では最も古いとされています。城の形は望楼型で3重4階、地下2階になっています。なかなかかっこいい形です。これまで写真では何度も目にしていましたが、門をくぐると実物の犬山城がありました。小ぶりです。とりあえず城内を歩き回りましたが、すぐに歩き終えました。
目的は何か!
さて、どうしようかという感じです。犬山城の入り口まで長い列ができています。登城まで2時間という看板の案内があるにも関わらず、大勢の人が並んでいました。「ここまで来たら登るか」と覚悟を決め、列の最後尾に付きました。今回の旅行の一番の目的は犬山城を訪問することです。日頃「本質は何か」を自分に問うていますが、それを実践することにしました。犬山城に来るまで乗る電車を間違えて1時間ロスが発生し、名古屋城に行くことが厳しくなりました。さらにここで2時間待ちすれば、おそらく二つの神社を巡ることは難しいでしょう。でも犬山城に来た以上、天守に登らず帰るのも心残りになります。実際は2時間より、もう少し早く登城できることを期待しました。
我慢強さは尾張だから?
並び始めたのは11時50分。ちょうど昼時でこれから暑くなる時です。この日は5月でしたが日差しが強く、なかなかの耐久レースになりそうでした。しかし、列を見ると、老若男女問わず並んでいます。若い男女もいれば年配者も。小さい子供連れの家族も並んでいました。子どもはよくじれて嫌がらずに並んでいるなと、感心するやらあきれるやらという感じでした。一方で外国人は皆無でした。犬山はちょうど尾張の地域にあります。尾張からは織田信長や豊臣秀吉など有名な武将を何人も輩出しましたが、こうした武将を育てる土壌として列に長時間並んでも苦にしない我慢強さがあるのかなと、ふと思ってしまいました。また、私の地元である松本城に2時間並ぶか?といったら、並ばずに別の機会にしていたと思います。そうすると、地元じゃない人たちが来ているのか、いやそんな感じでもないな、といろいろ考えました。
待ち時間100分
並んでいる時間を利用して読書をしました。本は中公文庫の『昭和史の天皇1』です。この本があったおかげで、じりじりすることはありませんでした。しかし、暑い!木陰があると本当にホッとしました。何も食べずにペットボトルの水を飲んでひたすら登城口に近付くのを待っていました。だいたい1~2メートルごと移動してはしばらく待つという感じでしょうか。そして13時半、待ちに待った登城口に到達しました。ちょうど疲れが出始めたところでした。100分待った価値はあるのか!靴を脱いで城内にいそいそと入りました。
中をぐるぐる
城の中は陽が射さないので涼しいです。階段はかなり急で、足を滑らせたら大けが確定ですので慎重に足を運びました。3重4階ですが、1階ごと展示物があるのでそれを見ながら1周し、上に登っていきました。疲れもあるので、よほどのモノでない限り、とりあえず目を通すという感じです。天守の最上階前の階段でまた列ができて20分ほど待ちました。上の階に上がるほど、城の空間は狭くなってくるほか、多くの人が一度に登ったり降りたりできないのでしょう。
絶景かな、木曽川
さて最上階に到着しました。城の外側をぐるっと一周できるようになっています。木造の手すりがあるので、それに守られているのですが、高所恐怖症の人にはかなり怖いと思いました。私自身、ひやひやしながら移動しました。当日はまったく風がなく快晴でしたが、風が吹いていたらさらに怖かったと思います。城の外側に出て見ると、鮮やかな風景が飛び込んできました。特にすぐそばの木曽川と緑の山のコラボは絶景でした。これを見るために2時間待つだけの価値はありました。カメラを持っていましたから何枚も写真を撮りました。1週、周るのに10分もかかりませんが満足感はありました。今回の旅行も犬山城だけでもいいと思えるものでした。
名城100城のスタンプゲット
登るのにあれだけ時間がかかったのに下城にかかる時間はあっという間でした。売店で抹茶アイスを食べて一息つきました。日に焼けましたし疲れを感じました。事務所のような場所で名城100城の犬山城のスタンプを押して目標達成しました。城を出て観光案内所に行きました。何かめぼしいものがないかと探しましたが「御城印」というのがありました。寺社仏閣にある「御朱印」の城バージョンということでしょうか。スタンプで十分なのでスルーしました。
本町通りで串焼き
犬山城を出たのは14時半ぐらいでしょうか。今から真清田神社に行っても行けなくはないですが、おそらく到着は16時ごろでした。夕方以降の参拝はあまりよくないと聞きます。今回は行くのをやめて帰路は城前の本町通りをぶらぶらすることにしました。行きで通った時に串に刺した肉を目にしましたが、それがおいしそうだったのでカルビの中落ちを食べました。味は思っていたほどでもありませんでしたが…。そういえば昼食は何もとっていなかったことに気付きました。
相変わらず人が多かったのですが、行きの時は近場に憩いの場所がないので、みんなが集まってくるのではないかと思いました。しかし、帰りの時はこの本町通りが持っている集客力ではないかと感じました。やはり店の造りや色使いなどが統一されていて、城下町の雰囲気を醸し出しています。道が適度な長さと広さなのでワイワイでき、飲食店が充実しています。松本生まれの私としては、松本城の周辺でもこういった通りがあればもっと集客できるのではないかと思いました。松本の方にもぜひ見てもらいたいです。
英国風パブで乾杯
その後は犬山駅前のカフェに入って休憩しました。夜に長野の実家へ行く予定でしたので金山駅に向かい、特急「しなの」に乗ることにしました。犬山駅から金山駅に移動し、金山駅とつながっている建物に英国風パブがあったので、そこでギネスなどを注文して、外のテラス席で飲みました。ちょうどいい風が吹いていて至福の時間を楽しみました。結局、犬山城だけの訪問になりましたが、なかなか中身の濃い時間を過ごせたので良かったです。次回、犬山に行くとしたら明治村でしょうか。(了)