東京風景(22)秩父宮ラグビー場

ラグビーの聖地、秩父宮ラグビー場

日本のラグビーの聖地として知られる秩父宮ラグビー場。明治神宮外苑の一角を占めており、すぐ近くには明治神宮球場があります。母校の大学ラグビーの試合を見るために、学生時代から何度か行ったことがある競技場です。社会人チームが競う「ジャパンラグビーリーグワン」はもちろんのこと、数多くの国際試合が行われてきました。ラグビーのビッグマッチでは収容人数が多い他の競技場などが使われることが多いと思いますが、ラグビー専用競技場としての価値は高いと思います。

秩父宮ラグビー場は1947年(昭和22)に女子学習院跡地に「東京ラグビー場」として完成しました。1953年(同28)、財団法人日本ラグビーフットボール協会の名誉総裁であった秩父宮雍仁殿下が逝去され、その遺徳を偲んで「秩父宮ラグビー場」と改称されました。収容人数は2万4871人。天然芝が使われており、スクラムを組んだ後にはスパイクによって深くえぐられたグランドを見ることができます。試合を観戦した人には共感してもらえると思いますが、観客スタンドとグランドの距離が近く、選手の息遣いや肉体と肉体のぶつかり合いを間近で見られるのが魅力です。

今回調べて知ったのですが、神宮外苑の再開発に伴う秩父宮ラグビー場の建て替え計画では、収容人数が約1万5000人で、完全密閉型の人工芝の競技場にするとのことでした。第1期工事が終了する2027年12月にオープンし、2034年5月にスタジアム全体の工事が完了するという計画のようです。コンサートなどでの利用も想定しています。今より約1万人も収容人数が減ってしまうとなると、ラグビーの聖地としてはどうでしょう。確かに施設を有効活用するためラグビー以外の用途で利用できるようにし、収益を上げるという視点も重要ではありますが、ラグビー専用競技場としての魅力は薄れそうな気がします。  

ラグビーファンであれば知っているかと思いますが、ここ数年の日本ラグビーの活躍は目を見張るものがあり、世界のラグビー界において一目置かれるようになりました。ワールドカップを通じてラグビーを見たり関心を持ったりする人も増えて、ラグビーの人気が広がっていると思います。こうした中で新しくできるラグビー場は、世界に誇れるラグビー競技場にしてほしいと思うのですが、実際はどんなものになるのでしょうか。(樹)

秩父宮ラグビー場正面にある像「主将」(富永直樹 作)
観戦席とグランドが近いのが魅力(早稲田大学対法政大学)

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