ジェームズ・スタンロー著 吉田正紀・加藤将史訳 新泉社 2010年
今、あらゆるところでカタカナ英語や外来語が使われています。特に頻繁に目にするのがネットやスマートフォンをはじめとするITに関する事柄、ビジネスで使われる最新トレンドの用語ではないでしょうか。
「ネットで買い物するためスマホを取り出して、アマゾンにログインしてクレジット決済を行い、ポイントをためる」。ちょっとした日常的な活動でも、カタカナ英語や外来語だらけです。ビジネスの現場ではDX(デジタル・トランスフォーメーション)やGX(グリーン・トランスフォーメーション)などの言葉が飛び交っています。いずれも企業にとって重要な取り組みです。
他にもスポーツやゲーム、流行しているスイーツなど、海外から入ってきたものや新しいものには、当たり前のように使われています。
こんなにもカタカナ英語や外来語が増えていていいのか?もっと日本風に訳し直す必要があるのでは?と前々から問題意識を持っていたところ、本書と出会いました。著者はなんと米国人の研究者です。カタカナ英語は、発音が日本語の言い方になったり全く異なった変化をしたりしている場合があります。ですから外国人には分かりにくいと思っていましたので、このテーマを研究した外国人がいることに驚きました。
例えば「ペットボトル」は、英語では「plastic bottle」と言います。海外で「ペットボトル」と言っても変な顔をされるでしょう。また「マクドナルド」は、海外でそのまま日本語の発音で言っても理解されないと思います。英語風に言えば「マクダァナーズ」(ダを強くいう)と発音が異なるためです。これは逆のことを考えてみればわかるでしょう。来日した外国人が「マクダァナーズ」と言っても、初めて聞いた日本人にはさっぱり何のことか分からないでしょう。海外での「McDonald’s」は、日本では「マクドナルド」になっているのです。
このようにちょっと考えてみて、いろいろおかしなことがあるカタカナ英語-外来語―和製英語について取り上げたのが本書です。読む前は和製英語の氾濫を問題視していましたが、読み終わって別の見方もできるのではないかと思い始めました。和製英語は日本語の表現手段を豊かにする現象ではないかと。
と言いますのも、和製英語は英語とは似て非なるものであり、日本人独特の感性や表現を映し出しているものもあるからです。日本には和語、漢語、和製英語のほか、かたかな、ひらがな、漢字、アルファベットといった文字が存在します。こんなにいろいろな表現を使っている言葉はあるのでしょうか。ぜひ他の国や言語は、どのように外国から入ってきた言葉を言い換えているのか、もしくはそのまま取り入れているのか知りたいです。
とはいえ、こんなにカタカナ英語が溢れていると、日本人にとっても大変です。次から次へと新しいカタカナ英語が入ってきます。主に名詞が多いかと思いますが、流行りものもあるので一時期だけ流行して忘れ去られるものもあるでしょう。特にネットやスマホに関連する言葉は次々から次へと新しい言葉が出てきているので、自分が時代に遅れになっているかもしれず、怖い感じがします(笑)。これも一種のデジタルデバイドでしょうか。世代によって、また、職業によってもそれぞれの分野だけで使うカタカナ英語があり、混迷を極めそうです。
和製英語のことを知るにつれて、あらためて外国人には日本語が難しいのではと思うようになりました。日本人であれば、かなとカタカナの違いはすぐに分かりますし、当たり前に漢字を使っています。しかし、外国人からするとかなとカタカナの違いも分かりにくいですし、まして漢字を覚えるとなると気が遠くなりそうです。そして和製英語があると知ったら…。
いずれにしても本書は和製英語についていろいろと考える機会を与えてくれました。そして日本人にとってもややこしいことを米国人が分析していることに感動しました。外来語のことを考察する場合は、本書を手元に置いて見返したいと思います。