420時間講座ってどう?(中)

 前回では、日本語教師養成講座のもろもろについて触れました。今回も養成講座について感じたことや気付いたこと、今となって言えることなどを綴っていきたいと思います。

 足かけ4年で講座修了

 私の場合、養成講座の修了までに3年余り、足かけ4年の年月がかかりました。当初は2年で修了する予定でしたが、この間、転勤があったほか、実際の外国人に日本語を教える実習の時期が合わなかったなどの理由があったからです。

 3年かけて通っていた人はあまりいなかったと思います。私が講座に通っている間に、国の通知により(?)養成講座で学習到達度をチェックするようになりました。すなわち各科目の終了時にテストを行い、及第点をとれなければ再テストを受けることになったのです。養成講座の修了者が実際に外国人を教えても、あまり質が良くなかったということがあったのかもしれません。

 正確には覚えていませんが、8割以上(?)の点数をとらないと、再テストではなかったでしょうか。再テストでも及第点がとれなければ、その科目の単位を落とすことになったのかもしれません。その当たりはさだかではありませんが、私はそういった制度が導入される前に養成講座を始めていたので、テストが及第点に達していなくても問題なく履修できました。いや、及第点には達していたと思います(笑)。

 唯一あったのが出席率です。一定の出席率を下回ると単位を落としてしまいます。確かに420時間の講座ですので、受講時間が少なければその意味がありません。私はいくつかの科目で何回か欠席したことがありましたが、出席数が足りなくて単位が取れなかった、ということはありませんでした。

 転勤により新天地へ

 転勤があっと時は、ほぼ座学の科目が残り1~2科目、もしくは終わっている状態(ここも記憶が定かでありませんが、汗)でした。通っていた資格スクールが大手だったこともあり、転勤先にも資格スクールの拠点があり日本語教師養成講座を開いていました。

 ここで私は東京を離れ、「転校生」として某地方都市の教室に入ります。東京と異なり先生の人数も少ないですし、履修したい科目も自由に取れません。履修する必要のある科目(これが実習かどうか忘れています)がすぐにはなかったため、新天地に移ってから半年間は養成講座を休んでいました。

 新天地でも学習者の大半は女性でした。男性も年配の人と20代の若者数人ぐらいだったような気がします。全部で20人程度でしょうか。東京よりもこぢんまりとしていました。当時40代の男性は私の他に誰かいたかな?という程度です(お互いの年齢を尋ねることはないのでわかりませんね)

 徹夜で教案づくり

 新天地での思い出は実習につきます。実際に自分で15分や30分の模擬授業を行い、外国人に教えるのです。外国人の生徒は地元ナンバー1の国立大学の留学生でした。多くの外国人が留学しています。養成講座の実習があるたびに参加している外国人もいるとのことでした。どうやらちょっとしたアルバイトになっているようです。

 苦労したのが授業の段取りをまとめた教案作りでした。15分であれば15分の30分であれば30分の授業のシナリオを考える必要があります。今回の授業で教えるテーマを決め、それに必要な文法や用語、教え方、一連の流れを決める必要があります。どのタイミングで学習者にどういうワークをやってもらうかも段取ります。

 実習のある前夜(金曜日もしくは土曜日だったような)はいつも修羅場でした。夜に教案作りに着手し、夜通しで朝までやっていました。朝が来ても教案づくりのテンションは落ちません。というのも、当日は模擬授業をやるということで相当、緊張していました。

 教材の作成は大変

 教材については、ネットでフリーの素材(写真やイラスト)を探したり、模擬授業で使う単語や文法の文字を印刷したり、カッターで切ったり、紙の後ろにマグネットをつけたり(ホワイトボードにくっつけるため)と結構時間がかかりました。正直、これを自分が実際に日本語学校で教壇に立ったとき、毎回やるのはしんどいなと思いました。

ひらがななどは、最初、自分で書いていました。しかし、文字が均一でなく必ずしも上手ではなかったので、パソコンで打つようにしました。文字の大きさをどうするかも考えました。こういったことは何度か模擬授業を繰り返すことで、少しずつ改善されていきます。模擬授業では自分だけでなく他の人の授業もみるので、いいところを取り入れたりしました。中にはイラストが上手な人がいて、「これはまねできないなあ」ということもありました。

 思い通りにならない

 授業のやり方は学校の講義でDVDを見せてもらい、先生からポイントを学びました。とはいえ、実際にやってみると、そんなにうまくいくはずがありません。時間通りにいかず押してしまうこともあれば、想定よりあっという間に終わってしまい時間が余って焦ったことなど、冷や汗の連続でした。

 とはいえ、外国人学習者の反応がよかったり、楽しそうだったりすると、こちらもテンションが上がります。終わった後に一緒に見ていた日本人の受講生も感想や改善点などを書いてくれるので「よかったです」という文字があると、「やったあー」と自信を深めていました。

 外国人の学習者との授業を通じての会話は何とも楽しいものでした。地元ナンバー1で、全国的にも有名な国立大学の留学生ということもあり、元々頭が良いということもあります。ですから彼らもこちらの事情を察してくれますし、日本語のことをよく知っているということもあります。これが本当にまだ日本語のことや日本のことを知らない学習者であれば反応も違ったでしょうし、対応の仕方ももっと違ったかもしれません。

 経験が重要か

 いずれにしても、学習者に教える段階で改めて、文法を正確に知っておかなければいけないとか、覚えておかなければいけない事柄の多さに気が重くなりました。一方でそれは経験を積むことで解消できることでもあります。さらに改めて学習者と接することで、日本語を教える喜びを感じたのが実習の良さでもありました。

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