監修:十枝慶二 イラスト:福家聡子 2026年1月
日本の国技と言えば何でしょうか。ほとんどの日本人が「相撲」と答えるのではないでしょうか。子どものころに相撲をとったことがある人がかなりいると思います。そして、NHKの夕方に放送される大相撲中継を見ていた(見ている)人も相当数いるでしょう。
しかし、中学校や高校で相撲部がある学校はかなり少ないのではないでしょうか。また、国技であるとはいえ、ナマの大相撲を見たことがある人というのは、そんなに多くはないのではないでしょうか。
日本へのインバウンドが増えるにつれ、外国人の大相撲人気が高まっているようです。最近では大相撲のチケットを取るのが難しくなったとも聞きました。年6場所開催されるとはいえ、東京で3場所、大阪、名古屋、福岡で各1場所ですから、思い立って今日、明日に見に行こうと思ってもなかなか見るチャンスがないということもあります。
私にとって大相撲は、小さい頃に父親がテレビでよく見ていたのでそれにつられて見ていたことがあります。ですからある程度はわかりますが、実際に見たことがあるのは1度だけです。しかも50歳過ぎてからです。
何となく知っている大相撲。とはいえ、外国人に説明できるかと言えば、言葉に詰まってしまいます。すなわち知っているようで知らないのが大相撲なのです。ちなみに大相撲とは日本相撲協会が運営する職業相撲のことを指すようです。
その大相撲を分かりやすくまとめたのが本書です(本題に入るまでに文字数をかけました)。相撲は国技と記載しましたが、本書によると国技の明確な定義はないとのことです。でもほとんどの人が国技と思うのは、1909年(明治42年)に東京・両国に完成した相撲を行う施設を「国技館」という呼称にしたためではないかと推察しています。
日本語を教える立場として、日本の国技である相撲について「もっと知りたい」という気持ちがありました。そういう意味で本書は、基礎的な相撲を知る導入本として適していると思います。ある程度知っている人であれば、基礎的なことを確認しながらこれまで知らなかったことも発見できるかもしれません。
題名にもある通り、イラストが多用されています。特に、勝った力士がどんな技を使ったのか示す「決まり手」をイラストでわかりやすく説明しています。
決まり手はいくつあると思いますか。「押し出し」や「寄り切り」、「上手投げ」、「下手投げ」など、相撲をある程度知っている人なら分かる技だと思います。私自身、50ぐらいかと思っていましたが、何と82手あるとのことです。
82手あるといっても、すべての技が使われているわけではなく、まだ実際の取り組みでは1度も出たことがないものもあります。決まり手の多さに驚きますが、それを瞬時に見分ける相撲関係者の目もすごいと思います。勝敗がついた後、すぐに決まり手を場内アナウンスしますからね。
「横綱」や「大関」、「前頭」や「十両」といった番付も大相撲の特徴の一つではないでしょうか。かつては大関が最高位でしたが、江戸時代のある時期に横綱が登場し、大関より上の最高位に位置付けられたようです。
大関以下は負け越しによって降格がありますが(大関は2場所連続で負け越し)、横綱は陥落がありません。それゆえ、これ以上横綱としての役目を果たせないということであれば引退することになります。
大関のままであればもっと活躍できたと思うのに、横綱になったがゆえに引退せざるを得ないのはもったいない気もします。横綱の場合は勝敗だけでなく、「品格」も求められます。では品格とは何でしょうか。
本書では品格に関する記載はありませんが、国技である以上、品格が考慮されるのは仕方ないのかもしれません。品格というのは、「横綱にはこうあってほしい」という願望や期待みたいなもので、なかなかこれといったものがありませんからわかりにくいものです。
特に小さいころ外国で育った外国人力士には理解しがたいかもしれません。逆に言えば中学・高校生ぐらいまでに日本人らしい考え方が身に着くということでしょうか。
相撲界にいったん入れば、すべてが相撲漬けになります。それでも、相撲界に入るまでにどこの国で生活してきたかが個人の人間形成に大きく影響し、品格に関する意識が異なるのかもしれませんね(これはあくまでも一個人の推察ですので、もしかしたら違うかもしれません)。
あと、本書を読んであらためて驚いたのが、十両より下の「幕下」以下の番付では給料がないことです。本場所ごとに場所手当が支払われるというのですが、それでは生活できないのではと思ってしまいます。ただし衣食住は相撲部屋から提供されるとのこと。結婚を考えると、十両以上でないと難しいかもしれません。
このほか、大相撲に関する基礎的な情報が記載されています。大相撲の入門書としていいと思います。
今後は相撲など、日本の伝統文化にも触れていきたいと思います。相撲はしばらくいろいろ調べてみるつもりです。